お客様からの贈り物

貧乏学生ゆえ常にアルバイトをして生活してきたが、中でもカフェで働いた4年間は実に様々な経験をした期間だったように思う。そもそも当初はアルバイト行為自体が初めてであり何もかもが新鮮だったのだ。接客用語、レジスター、ウエイトレス、皿洗い、ピザ焼き、気持ち悪いくらいの笑顔、厭味なおつぼねマネージャー、デブで使えない店長、異臭のするオカマ口調の店長*1、客席を走るドブネズミと客たちの絶叫、冷凍庫で見つかったフリーズ・ゴキブリ(我々もフリーズ)、出勤前ホステス客の不機嫌ぶり、訛ったセクハラ発言がうざすぎる常連客・・・挙げていけばキリが無い。今日は中でも思い出深い「お客様からの贈り物」と題した話をしたいと思う。
その日は閉店までシフトが入っていた(記憶が曖昧だが23時半締めだったように思う)。締め作業は基本的に社員とバイトの2人でこなすのだが金曜日だけはもう一人助っ人が入る。終電のこともあり作業は時間との闘いだ。最後の客が帰り愈々仕事も終盤戦に突入、我々は慣れた手つきで黙々とそれぞれの作業をこなしていた。その時だった。トイレ掃除担当のKが青ざめた顔でやってきたのは。
K「ちょッ、つーかまじでヤバイことが起きてるんですけど・・・ちょっと来てみて下さいよ。」
N(社員)「えー、なになに。どうかしたー?」
私は耳だけそちらに傾けたまま作業を続けていたが、様子を見にいったNさんのギャーという悲鳴に作業を中断、急ぎ現場へと駆けつけた。
そして私は見た。男子トイレの小専用便器に、鬼でっかいうんこが放置されているのを。

我々はしばし絶句した。だがここで立ち止まっているわけにも行かないのだ。我々に残された時間は少ない(嗚呼終電が!)殿方なら容易に想像がつくと思われるが、小用便器は汚物を流すに流せない構造になっており、思案の果てにこうなればいかんともし難い、もはや我々の手でもって取り除くしかないという結論に至った。そこで勇敢にも名乗りをあげたNさんは、何を思ったかパンなどを掴むためのトングを持ち出し「これでいっか!」と言ったかと思うと便器と対峙、何のためらいもなくうんこを挟み除去していった。「いやーん、ちょうやだー、うんこー!」と叫ぶ声が何故か楽しそうに聞こえたのは気のせいだと信じたい。
そしてなんとか無事作業終了、トングはうんこもろとも廃棄処分されたのだった。ようやく一息ついた我々だったが、その時突然嫌な予感が私を襲った。「人がうんこをした場合、必ずや尻を拭く。この事実が意味するところは・・・。」
私はトイレに向かって走った。ただの思い過ごしであって欲しい・・・まさか、まさかあんなに硬いペーパータオルでうんこを拭うなんてこと!(少し補足すると、男子トイレには小用便器しかないためトイレットペーパーは常備されていないのだ。)そして恐る恐る備え付けのゴミ箱を覗くと・・・。
非常に残念な結果を受け、再びトングが活躍したことだけ記させていただきます・・・。明日は我が身、お客様は神様、南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏・・・。

*1:彼にまつわる話はこちら⇒http://d.hatena.ne.jp/kakiko/20060920#p1