直腸検査

我々獣医の間では「チョッケン」と略される直腸検査。直腸それ自体を検査するという主旨ではなく、直腸に手を突っ込んで中の臓モツたちを触りまくるという鬼畜プレイ・・・ではなく歴とした医療行為であり、内臓を触診することで様々なビョーキやあるいは妊娠・胎児の状態を確認できるのでR。無論人間の腕を入れるわけだから対象動物も限られてくる(ウシさん、お馬さん、ぶたぶた等)。私も実習で何度か突っ込ませて頂いたが、あのえもいわれぬ締めつけられ感(イイ!)は味わった人にしかわからぬ気持ち良さであろう(と獣医のクラスメイトに言ったら全くもって賛同を得られなかったが・・・)。まァしかしアレだ、皆様もご察しの通り直腸といえばうんこ、うんこと言えば直腸ということで、ウンが悪いと腕を引き抜く時にウンコシャワー(顔射)を被る事にもなり兼ねないところが作業に更なる緊張感および昂揚感をもたらすのであろう。
・・・と直検の魅力を十分にご理解いただいた上でカミングアウトさせていただくが、何を隠そう私も直検をされた身の上なのだ。あれは確か22、3の頃、当時住んでいた杉並区の一室で私はうんこをしていた。さてさて今日もイイうんこちゃんが出たかしらと便器を見やったところがそこは一面血の海。うっへェ。私は一瞬たじろいだが、さしたる痛みもなかったのでうんこもろとも水に流すことにしたのだった。
だが事態は悪化の一途を辿る。その後うんこをする度に出血がみられるのだ。さすがの私も心配になり、事もあろうか当時お付き合いしていたnico氏に相談を持ちかけたのだった。
「君、そらアカンわ。痛くないってことは痔ィちゃうやろ?なんか病気ちゃうん。」
いやいや、そんな大したもんじゃないよきっと!まァもう少し様子見てみるわ。そう答えた私にnico氏はたたみかけた。
「いやいや絶対おかしいて。普通血ィ出ェへんもん。痛くないのもおかしいし。」
それでもいやいや平気なはずと言い張る私にとどめの一言。
「君、手遅れになったら死ぬで。」
ししし、死ぬの!?見事に洗脳され急激に不安になった私は即座に電話、地元(栃木)の病院で検査を受ける手筈を整えたのだった・・・。

検査は究極の羞恥プレイかと錯覚するほどに凄惨なものだった。むしろ殆ど罰に近かった。前日から絶食、当日は同じく直腸検査を受けるオッサン達に入り混じり(もれ紅一点!)半日かけて1リットルもの下剤を飲まされる。「あら。お姉さんも?辛いよねェお互い。」とオッサンに仲間意識をもたれ困惑。うんこは病院の一般者用のトイレでするのだが、完全に透明な状態になるまで何度も通わなければならず、しかも一々看護婦さんを呼んでチェックしてもらわなければならないのだ!呼鈴を鳴らすと外に看護婦さんが来て「どうかされましたかー?」と怒鳴る。一般人の好奇の目。そろそろとドアを開け、その透間から「あの・・・えっと、検査のためにその・・・。」とまごつく私。嗚呼、赤の他人に見せるうんこの哀しさよ!
ようやく全てのうんこを出し切ると次なる試練が待っている。パンツを脱ぎ、肛門部分に穴が開いたズボンに着替えさせられるのだ。死にたい。だがしかし後戻りはできない。さらに追い討ちをかけるように、普通に歩けるにも関わらず何故か車椅子に乗せられ検査室まで連行されるのだった。
先生は若い男の人だった。見ず知らずの若い男に尻を、つーか尻の穴を・・・!気が遠くなった。診察台に横たわる私。肛門にリドカイン(麻酔薬)を塗る先生。嗚呼ひんやり!続いて内視鏡を挿入・・・あっイヤ、先生、やめてください、アア!と無駄にポルノ調で書いてみたが実際はそれどころの騒ぎではなかった。つーかリアル激痛っすよ?とくに下行結腸から横行結腸に曲がるとこが。痛がる私を見て先生は「ああごめんごめん。俺ヘタクソなんだよねーハハハ。」とのドS発言。プギャー!
検査後点滴を受けながら腸に溜まったガス(おなら)を出すのだが、もはや羞恥心など微塵もなくなっていた私は人目も憚らずぷっぷこしたよ。えへへ、これおならちゃいますねん、ただの空気ですよくさないでっせー。うへへー。

検査結果は異常なし、結局原因は分からず終いのまま大量の塗り薬(カンチョウタイプ)をもって東京へと戻ったのだった。この辛く哀しい話を聞いたnico氏はこの上なく嬉しそうだった。
「俺がカンチョウしたるわ。うへー。」
変態と付き合うとろくな目に合わないと改めて感じた瞬間であった・・・永眠。